~ありたい未来社会に向けた、有識者による対話の会~
未来デザイン車座対話は、さまざまな社会課題に対し、多様な視点(企業/大学/市民などの視点)からの議論により、課題のもたらす影響について共有するとともに、それを克服した「ありたい未来社会」の姿を描き、その実現に向けて取り組むべきことを考える、対話の場です。
現在は、東京大学、朝日新聞社、三菱電機からの有識者8名に、ファシリテータを加えた9名で構成しています。各回とも、あらかじめ定めたテーマの下、各回のゲストスピーカーからの話題提供に続き、いくつかの論点についてディスカッションを行っています。
「生産年齢人口減少下でのまちづくり」
日本は本格的な「人口減少時代」に突入しています。現在、少子高齢化は加速度的に進行するとされており、今後、人口は年間100万人ペースで減少し、2100年には現在から半減(6300万人)すると見込まれています。人口における年齢層比率も大きく変わり、高齢者比率が増えるのに対し、生産年齢人口(15歳から64歳まで)は絶対数・比率とも大きく減少します。
日本をはじめとする先進国は、戦後、人口増加を前提にした社会システムやサービスを構築してきましたが、いまやその前提が崩れ、今まで通りのシステムやサービスの維持が困難になっています。24年度の車座対話では、この課題を取り上げ、将来の革新的なテクノロジーも活用しながら、人口減少下でも明るい未来社会を創るにはどうすればよいかについて、検討を行います。
未来デザイン車座対話として最初の会議を、5/21に東京・汐留の会議室にて行いました。今回は、今年度に4回実施予定の車座対話に先立つキックオフ会議の位置付けとして、将来のありたい未来社会を議論するにあたり、討議メンバ―がいま感じる「変化の兆し」について共有するとともに、そのうち、今後の会議で取り上げたいテーマについてディスカッションしました。
その結果、今後の人口減少によって深刻化する社会課題も多く想定されるなか、今年度の車座対話では、テクノロジーなどを活用した「ありたいまちの姿」を描いていくことになりました。
24年度第1回の車座対話は、東京大学 伊藤国際学術研究センターにて行いました。今回のテーマは「人」です。「人」にフォーカスしてまちの未来を検討し、各世代の生きがいや、ありたい人生と、それらを阻む要因を浮き彫りにし、世代を超えて希望を持てる未来社会への道筋について議論しました。
これからの人口減少社会では、公共サービスの一律提供には限界があることを前提に、政令指定都市などを、東京と地方の中間拠点として機能強化することで、地方の受け皿となるのではないかという意見が提案されました。一方、行政にとっては、選挙などを意識して、不都合な事実を伝えにくい風土があり、サービスの低下に対する社会受容性を高めたり、人の孤立を防ぐ観点からも、コミュニケーションの重要性が示されました。
第2回の車座対話は、10/16に朝日新聞社 東京本社にて行いました。第2回は、「技術」の観点からまちの未来について検討しました。
2040年の未来社会にもっとも大きな影響を与える技術の1つとして、AIが挙げられました。合意形成の難しい社会課題に対しても、AIが少数意見まで取り入れたうえでの最適な解決策を出してくれるのではないかという意見があった一方、すべての人に最新技術に対する受容性があるわけではなく、丁寧なコミュニケーションが求められるといった意見もありました。技術の活かし方がまちの個性になり、人はその個性を見てまちを選ぶ時代が来るのではないかという意見になりました。
第2回からまもない10/30に、東京大学 伊藤国際学術研究センターにて、まちの人たちの「合意形成」をテーマに第3回を行いました。
討議では、下北沢再開発では住民参加の街づくりにより、比較的スムーズに合意形成が進んだことを踏まえ、みなが納得する意思決定プロセスが重要との意見になりました。ますます進展するAIなどの技術を使えば、多くの住民の意見を取り入れた最適解を出すことも期待されるが、住民が参加しての熟議を経て、自分たちの意見が反映されたという手応え感も、まちに対する愛着形成や、住民が地域運営のプレイヤーとなるためのキーファクターとして重要であるという意見になりました。
未来デザイン車座対話は、その参加メンバである朝日新聞社、東京大学、三菱電機の場所持ち回りで行っていますが、24年度第4回の車座対話は、12/10に三菱電機本社にて行いました。今回は、「ありたい社会へのトランジッション」と題し、24年度のまとめを行いました。
人口が縮小する8がけ社会では、多様な価値観を持つ人たちが共生することが不可欠であり、それぞれの人が複数の個性やありたい姿を持ち、それを実現するコミュニティや場所を選択できる同床異夢社会こそが、私たちにとってのありたい社会であると結論づけました。また、8がけ社会では、人と人とのコミュニケーションが疎になる中、テクノロジーがその補完を果たす役割として期待されるのではないか、他方で、テクノロジーの受容性は人によって異なることから、その浸透にあたっては丁寧なやり方が求められるといった意見がありました。
日本の人口は2008年をピークに減少傾向にありますが、今後、そのスピードは加速し、年間100万人ペースで減少し、2040年には、現在の8割程度の人口になると予測されています。
こうした「8がけ社会」では、社会保障を必要とする高齢者世代とそれを負担する若者世代、労働力不足を補うための外国人材の増加とそれを受け入れる日本人、人口集中の進む都市と過疎化の進む地方などで、不平等感をもとにした考え方の対立が増えてくることが想定されます。
世界に目を向けても、各地で起こる紛争や、自国ファーストの考え方、GAFAMなどの巨大テック企業による寡占化が進み、世界の分断が加速している。
こうした中、未来デザイン車座対話では、ありたい社会の姿として、さまざまな人が助け合い、また他者を排斥するのではなく、刺激を与えてくれる存在として受け入れることができる共生社会を描きました。さまざまな考え方を持つ人が同じ場所に集う「共存」社会ではなく、相手が同じ場所にいることが互いの利益につながるような「共生」社会を目指したいとしました。
この「共生」社会への道のりは決して簡単なものではありませんが、未来デザイン車座対話では、24年度の活動を通じて、3つの糸口をつかみました。
1つ目は、下北沢の再開発で取り入れられた「くじ引き民主主義」です。組織票をもつ人が勝つ議会ではなく、くじ引きによって選ばれた一般市民がまちづくりを行う仕組みとして、有効に機能した結果、満足度の高いまちづくりが実現できたそうです。
2つ目は、「熟議のプロセス」です。生成AIの進展は著しく、将来的には、人の手を煩わせることなく、世界中のあらゆるデータをもとに、どんな問題に対しても適切な答えを出してくれる時代が来るかもしれませんが、下北沢の事例では、対立する人たちが熟議を重なることで歩み寄ることができたとのことで、結果だけでなく、熟議のプロセスこそが、合意形成に重要だという意見がありました。
3つ目は、「テクノロジーの活用」です。人口減少により、人と人との交流機会も減っていく可能性もありますが、テクノロジーはソリューションスペースを広げる役割として積極的に使っていくべきだと考えます。他方、世論調査の結果では、テクノロジーへの受容性には人による違いが大きいことが分かっており、そのインターフェースを含め、丁寧なやりとりが求められます。
未来デザイン車座対話のメンバー内では、24年度のまとめとして、エッジのきいた結論(提言)を出すことを目指したいという意見もありましたが、容易に答えの出せない社会課題を取り上げていることを踏まえ、押しつけとなる可能性のある結論を1つ出すよりも、社会に対する問いかけを結論とした方がよいとの意見になり、冒頭の問いかけを行うこととしました。
今後、この発信がきっかけとなり、多くの人に考えてもらうきっかけにあることを願っています。