研究課題 02 |

意味中心のデザインエンジニアリング

社会連携講座「意味的価値や社会的価値を生み出すデザインエンジニアリング」

デザインエンジニアリング

講座長ご挨拶

現代社会は、地球環境の制約や資源の有限性に加え、少子高齢化による生産年齢人口の減少という深刻な課題に直面しています。限られた資源と人材を最大限に活用し、持続可能な社会を実現するためには、単なる効率化やコスト削減だけでは不十分です。製品やサービスに新たな「意味」を創出し、人々の生活や社会との関わりを豊かにすることが求められています。この意味創出は、物質的価値にとどまらず、社会的・文化的価値を生み出し、持続的な価値循環の基盤となります。

従来の設計や開発は、主に性能や効率といった機能的価値の向上を中心に進められてきました。しかし、人口構造の変化と資源制約のもとでは、単なる機能や数量の拡大では社会課題を解決できません。現代においては、製品やサービスが提供する体験や共感、社会的意義こそが、人々に選ばれる理由であり、持続可能な社会を支える鍵となります。そして、こうした意味的価値や社会的価値を高めることは、製品やサービスへの長期的な愛着をもたらし、結果として経済的合理性の確保にもつながります。

本社会連携講座(意味的価値や社会的価値を生み出すデザインエンジニアリング講座/Design Engineering for Semantic Value:以下、SVDE講座 )では、「意味のイノベーション(Innovation of Meaning)」――すなわち、製品やサービスの新たな「意味」を創出し機能的価値を含む統合的な価値の革新――を実現するために、東京大学が有する 感性設計学やサービス工学の研究知見を基盤として、人々の感性や文脈に基づく価値創出を工学的に支援する理論・方法論を構築します。感性設計学と意味のイノベーションを統合することで、製品・サービスの機能的価値から社会的価値までをつなぐ設計原理を提示し、新たに「意味中心設計の工学(Meaning-centered Design Engineering)」として提案します。これにより、持続可能かつ文化的に豊かな社会の実現に貢献します。さらに、三菱電機の事業領域を題材とした実践的応用研究を通じて理論の洗練と社会実装を推進し、意味主導のモノ・コトづくりを担う次世代イノベーション人材を育成します。

本講座の研究成果や活動は、研究論文に留まらず、フォーラムやホワイトペーパー、連載、出版物など多様な媒体を通じて積極的に社会へ発信していく予定です。新たな価値創出に向けた知見と実践の展開に、どうぞご期待ください。  

研究課題と取り組み

1.価値構造の解明とモデル化

  • 意味的価値・社会的価値を含む多次元的な価値構造を整理し、価値間の相互関係や価値創出のメカニズムを理論化します。
  • 価値創出研究の基盤となる理論的フレームワークを確立します。
  • モノやサービスが有する価値を分析し、事例研究を通じてその構成因子を明らかにします。

2.デザインプロセスの体系化

  • 得られた知見をもとに、価値創出のための設計指針を構築します。
  • 特定の製品やサービスをモデルケースに、意味的価値・社会的価値の創出プロセスを整理・体系化します。
  • 製品設計やサービス開発に応用可能な「価値創出の方法論」として整備します。

3.意味的価値の定量化・評価手法の開発

  • 人の感情や感性を数学モデルとして扱う「感性設計学」を活用し、価値の主観的側面を定量化します。
  • 意味的価値や社会的価値を科学的に測定・評価できる指標・手法を開発します。
  • 工学的アプローチと人間中心設計を統合した新しい価値評価体系を構築します。

4.価値訴求と市場展開の方法論の確立

  • 付与された意味的価値・社会的価値を、顧客に適切に伝達し、価値に見合う対価を得る方法を研究します。
  • ブランド戦略やUX(ユーザー体験)設計と連携した価値コミュニケーション手法を開発します。

5.「意味のイノベーション」のためのサービスメカニズムの開発

  • 顧客・企業・行政・地域社会など、複数のステークホルダーが関わる価値共創を実現するメカニズムを設計します。
  • 経済学のメカニズムデザインをサービスの文脈へ応用し、ステークホルダー間のインセンティブ構造を定式化し、意味的価値を創出する構造を解明します。
  • 意味的価値や社会的価値が自然に増幅・拡散するエコシステムを形成し、社会全体で意味のイノベーションを導くメカニズムを開発します。

6.教育・人材育成への展開

  • 構築した価値創出の方法論を、東京大学における講義・ワークショップ・フィールドワークを通して教育に還元します。
  • 工学のみならず社会学・経済学にまたがる素養を有し工学知の社会実装を行えうる人材を育成し社会に輩出します。

発表文献

感性設計学に関する参考文献

【感性設計学に関する解説】

【感情の数理モデル】

【感情の数理モデルの応用】

ニュース

  • 2025.9.1
    2025.9.1
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