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2024.6.14

「働きがい-感情力学と探究サイクル-」についての勉強会を開催しました。

6月10日、毎月定例の勉強会(非公開)を開催し、今回は東京大学大学院 ⼯学系研究科 柳澤秀吉准教授をお招きしました。

柳澤先生は、心の豊かさをもたらすモノづくりのための感性設計学の体系化に向けた方法論と応用研究をなさっています。今回の講演では、ウェルビーイングの重要な要素である「働きがい、生きがい」に焦点を当て、認識、行動、感情の数理モデル化と工学応用について最新の研究をご紹介いただきました。

感情の理工学的判断に対し、熱力学で馴染みの「自由エネルギー」量を導入し、認識と行動は自由エネルギー最小化原理にしたがうものとの考えに基づき、感情⼒学のアイデア、探究の原動⼒としての感情、探究がもたらすプロセス価値、などを定量的に評価して分析する、という我々にとって斬新なものでした。

● 脳は五感のセンシングそのものでなく、⾃由エネルギーを最⼩にする様に認識し意思決定しており、ここでいう⾃由エネルギーは「覚醒度」であり新奇で複雑であるほど高くなる特性のものである。
● 脳が環境内で平衡であるためには「その自由エネルギーを最小化しなければならない」と従来考えられてきたが、感情価(快さ)の指標を考慮すると適度な覚醒度が存在し、「自由エネルギーΔFの最大化」原理を提唱している。
● 自由エネルギー最小化の過程で生ずる情報獲得の最大化に至る2種の好奇心(拡散的、特定的)の往来が最適覚醒水準付近の不確実性のゆらぎをもたらし感情価を最大化する、逆に探求のサイクルを駆動する感情となる。
● この探求サイクルには「結果」の直接的価値があるが、プロセス自体にもユーダイモニアとしてのwell-beingの価値がある。

などのお話があり、AIは判断過程が不透明であるのに対し本法はアルゴリズムに従いプロセスの把握が可能である利点があり、生成系AIやロボティクスの検討が始まっている、とのことでした。

未来デザイン会議では、ウェルビーイングと働きがいを重要視した未来社会を議論していますが、感性の理工学的なアプローチによる新しい数理的・定量的な評価は大きな気づきとなりました。