5月17日、毎月定例の勉強会(非公開)を開催し、今回は京都大学 人と社会の未来研究院 内田由紀子院長・教授をお招きしました。
人と社会の未来研究院は、人文社会科学の知見を通じて未来社会の様々な課題に関する対話と研究を生み出すプラットフォームを標榜しており、これまで未来デザイン会議でのウェルビーイングの講演は主として自然科学を出発点としていましたが、今回初めて人文科学の視点、特に内田院長・教授のご専門の文化心理学・社会心理学を起点とする講演でした。
幸福は個人の感情やスキル・能力・状態だけによって得られるものではなく、他者や社会とのinterdependenceに基づいて感じられるものですが、職場や地域などの「場」において実現されるウェルビーイングの測定や理論についてご紹介いただきました。
● ウェルビーイング(Well-being)は、「幸せ(happiness)」より、包括的で個人のみならず個人をとりまく「場」が持続的によい状態であること。
● 価値観や精神性は国や地域の文化により異なるため、多様なウェルビーイングを認め、それぞれの国・集団・地域での文化的価値につながる「ウェルビーイング」のあり方を考える必要があること。
● 例えば、北米では人生の満足感が尺度の「獲得系ウェルビーイング」、日本・韓国では人並み・協調的幸福の「協調系ウェルビーイング」の傾向が有り、両者とも長所短所が有るが日本では場づくり/信頼関係が重要であること。
などのお話が有り、日本でのウェルビーイング検討では、「場のウェルビーイング」も意識した豊かな社会、集団、組織、地域はどのようなものかを考える必要があり、これまで主流の欧米価値観のウェルビーイング評価だけでなく、「場のウェルビーイング」に関して観測法・定量的評価手法を研究中である、との事でした。
未来デザイン会議ではウェルビーイングを重要視した未来社会を議論していますが、多様性を考慮した別視点での考察が検討の厚みを増すと感じました。