3月12日、毎月定例の勉強会(非公開)を開催しました。今回は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授と、東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授のお二人をお招きし、お話を伺いました。
(1)ウェルビーイングデザイン~如何にしてウェルビーイングな世界を創造すべきか~
前野先生からはウェルビーイングのデザイン、創造についてのお話を伺いました。
いま、生き難さや格差、戦争、環境破壊、パンデミック、戦争といった「幸せではない」状態がうみだされており、みんなが「幸せ」な、ウェルビーイングな状態になるにはどうしたらよいか、心理学的研究から経営学、経済学、工学、医学といった分野での研究が進んでいます。
例えば、幸福感とパフォーマンスの関係では、幸福感の高い人は「利他的」視野が広く、チャレンジ精神、創造性、生産性が高いのだそうです。
みんなが「利他的」で、視野を広く持ち、チャレンジ精神、創造性・生産性が高いウェルビーイングな状態になれば、社会課題解決につながっていくのではないか?ということから、モノづくり、職場づくり、教育づくり、まちづくりなど、あらゆる場にウェルビーイングを取り入れデザインしていくことが重要だということを、様々な事例を含めてお話しいただきました。
サービスやモノづくりに「幸せの条件」を活かしていけば、世の中の幸せも広がっていく。そのためには自分の幸せだけではなく、周りの幸せの実現も考えていかなくてはいけない、「利他的」であることがとても重要だと感じました。 ひとりひとりが幸せになり、社会全体もウェルビーイングな状態になるようなシステムを作り上げていくことが、少子高齢化によりどんどんシュリンクしている日本が再生していくためにも必要であることが認識できたご講演でした。
(2)「からだ」の自在化から「こころ」の自在化へ
次に、稲見先生から「からだ」の自在化から「こころ」を伝えるというテーマでお話をいただきました。
稲見先生はVRやウェアラブルデバイスを駆使して人間の身体的所有感を拡張し、そこから生まれた動きの情報・データを新しいサービスや製品に活用しよう(※)という研究を進められており、今回は動画を交えてのお話をいただきました。
ご参考映像:https://www.youtube.com/watch?v=ywrK1yTYRIA
※一人一人のディープデータを取得、分析することで、自分でも気づかなかった欲求を引き出し、そのニーズに沿った新しいサービスや製品を提供することが期待できるそうです。
自動化できるような仕事、例えば危険が伴うような高負荷な作業の他にも「絶対に間違ってはいけない」ような高い信頼性が必要とされる作業などもAIロボットなどに委ね、自動化を進めていくことが提案されていました。
そこからさらに進んで、身体を「自在化」するという技術は、自分がやってみたい動きをそれこそ「自由自在に」できるようにすることを可能にしようとするものなのだそうです。
人間拡張は、身体的能力を補完し向上させますが、「自在化」はそれだけではありません。今まではできそうにもないと思っていた動きや、考えつかなかった動きを可能にすることで、「こころ」にも多様な選択肢が与えられ、なんでも実現できそうだ、やってみよう、というワクワク感のある研究が進められているということが窺えました。
テクノロジーの力を借りて、自分の身体能力や想像を超えた動きができる、表現できるようになることは、「こころ」にも充足感をもたらし、ウェルビーイングの実現にもつながるのではないかと強く感じました。