三菱電機-東京大学未来デザイン会議では、今後起こりうるさまざまな事象がどのような社会の到来をもたらすかを大胆に推測し、これらを克服した「ありたい未来社会の姿」について議論すると共に、それを実現するための道筋を描いています。その一環として、様々な分野でご活躍の有識者の方々をお招きし、ご専門分野に関する最新動向やお考えを学ぶ勉強会(非公開)を開催しています。
25年度第4回目の勉強会を1月21日に開催しました。今回は、株式会社LINEAイノベーションのVP of R&D宮下裕次氏をお招きし、「安全で社会的受容性の高い核融合エネルギーの実現」についてご講演いただきました(About us | 株式会社LINEAイノベーション)。
近年、「核融合発電」は、脱炭素社会の実現、エネルギー安全保障の強化、さらには新たな産業創出による経済成長の観点から急速に注目を集めています。日本においては、2023年に内閣府が初めて国家戦略として「フュージョンエネルギー戦略」を策定し、これを受けて2025年には社会実装を視野に入れたタスクフォースが発足するなど、政策面でも本分野への本格的な取り組みが始まっています。
技術的観点では、現在の主流は磁気閉じ込め方式、特にトカマク型炉であり、ITERに代表される国際協力の下で超大型実験炉の建設・運用が進められています。一方で近年、これとは異なる原理・方式に基づく新しい核融合概念を掲げたベンチャー企業による技術開発が急速に活発化しています。これらの新方式は、従来型に内在すると指摘されてきた安全性・装置規模・社会受容性に関わる課題を、原理的に解消することを目標としている点に特徴があります。
今回のご講演では、こうした新方式の核融合技術を、従来の主流方式と対比しながら体系的に紹介していただきました。具体的には、従来「第1世代」とされるD–T反応ではなく、「第4世代」とも位置づけられるp–¹¹B反応を用いる方式を採用し、比較的小型で用途の柔軟性に富む装置構成を目指していること、さらに2035年頃の実証炉試験を視野に開発が進められている点が示されました。 核融合発電は、長らく「極めて遠い将来の技術」、「超大型装置を前提とする技術」という固定的なイメージで語られることが多いものでした。しかし本講演を通じて、原理・反応機構・装置構成が大きく異なる複数の核融合発電方式が現実的な選択肢として検討されつつあることが明確に示されました。これは、将来の社会構造に大きな影響を与え得るエネルギー技術について、既存技術の延長線上のみで議論するのではなく、新技術の可能性を多面的・俯瞰的に捉える必要性を強く示唆するものであると感じました。